医薬品の配達

医薬品の配送業務とは

何の仕事をされているんですか?という質問に、「薬の配達です」と答えると、必ずと言っていい程このような答えが返ってきます。

「富山の置き薬」とか「布亀の救急箱」?

私が答えたつもりだったのは、病院や薬局に薬を配達する“医薬品卸業者の配送”です。 時々病院に行くと、保冷バッグを持って配達している人です。

アルフレッサ、スズケン、メディセオ、共創未来といった会社があります。

私がこの業界に入って初めて知ったことがたくさんありました。
そのあたりを詳しくお話ししますね。

薬が病院や薬局に置かれるまでの流れ

大まかに書くと以下の通り。

製薬会社営業のMRが医薬品卸会社営業MSと連携 → 各病院・薬局に薬を売り込む → 病院・薬局は医薬品卸会社に注文 → 医薬品の配送員が配達

※MR・MSについて分からないという方は、MSとMRの違い[外部リンク]やZOOM UP! MSの仕事[外部リンク]の説明が分かりやすいですよ。

医薬品配送員の仕事

配送員の一日

配達の仕事って、今まで全くやったことのない人は「ただ配達するだけでしょ?」と思っていますが、それは大間違い。

そう思って求人募集にエントリーすると、こんなに大変だったのか!?となります。

特にこの業界は。

では、どんな作業があるのか一日の流れを追って説明しますね。

  • 出社後、朝一で配達する伝票を出す。

パソコンを使って、前日の締め時間(夜の8時前後?)までにいただいた注文分の配達伝票を印刷します。

この時、支店にすべての注文分の薬がある訳ではありませんので、欠品分をMSに報告。欠品分も朝入荷した中にあれば持っていけるので伝票を打ち直してもらって、また印刷。

なぜ担当のMSに報告するのかというと、注文した先生は薬を次の便で必ず欲しい場合、キャンセルして他の卸業者に注文する場合があるからです。

また得意先によっては、“専用伝票を使え”という指示がある場合もあるので、面倒ですが別のプリンターで専用伝票をセットしてまた印刷です。

  • 伝票を配達ルート順に並べる。

あとから追加がありますが、朝一で出た伝票をルート順に並べます。

  • ピッキング(出庫)された商品を取りに行き、自分の作業棚へ。注文伝票にそって検品し納品箱に詰める。

倉庫でピッキング作業をする人が、昨晩出した分に加え、それ以降に出された注文分は翌朝にピッキングされます。

さらに欠品分の補充もあとから追加されますので、出発時間までかなりバタバタします。

ちなみに配送員が検品することを “引き合わせ” と言います。

「メーカー名」「商品名」「JANコード(下4桁)」注文数量を確認して検品用の伝票にハンコを押さなければばりません。

しかも大量に出庫(ピッキング)された薬の中から一つずつ見つけて引き合わせしますので、慣れるというか商品の箱を覚えるまでは非常に時間がかかります。

さらに箱を凹ましたり瓶を落として割ったりしないよう丁寧に扱う必要もあります。

あと、15℃以下で管理する商品のことを “冷所”(冷所保存) と呼びますが、この冷所は保冷バッグに入れて配達します。

インフルエンザの予防接種の時は数が多くて大変です。

さらにマルコウは庫内の人に別で出してもらう必要がありますし、乗車に備えてアルコールチェックも義務づけされています。

  • 支店を出発

出発後は注文があった病院や薬局をルートに沿って配達しますが、急ぎで欲しい、患者さんが待ってる!なんて連絡が入れば、可能な限りルートを変えて持って行きます。(いつも配達する時間より、今日は早くとか色々注文してくる薬局もあります)

配達先では、対面配達にて引き合わせ。

受取伝票を使って商品の名前や数量を言ってもらい、こちらは商品を出していきます。そして必ず印鑑をもらいます。(マルコウや毒劇物は別途サインなどをもらう必要あり。)

この時、商品を受け取って頂くのは受付の方の場合が多いですが、薬局や時間帯によっては先生が受取をされます。

この引き合わせ、先生によってはメチャクチャ商品名と数量を言うのが早いので、商品を出すのが間に合いません。(涙目)

そんな時は「すみません、もう一度お願いします」です。

そして納品が終わった時に、追加注文をいただくことがあります。

しかし基本的に配達員が注文を受け取ることは出来ませんので、「担当の営業か事務の者に電話させます」というふうにします。

場合によっては注文をメモして外でこちらから担当の営業や事務に電話します。

また配達先の外(車の中)では、各配達先の到着時間や商品数量を専用端末に入力及び用紙に書き込みます。

  • 支店に帰社

配達先の受取伝票を指定の場所に。

この一連の流れを一日2回または4回行ないます。
(支店から遠い所を配達するルートの人は2回)

さらに、ほとんどのルートは“一括注文”の配達がそれにプラスされます。

一括注文とは

一括注文とは、病院や薬局が月に一回大量に薬を仕入れて、その分値引きしてもらう注文の方法。

あらかじめ、ある程度の注文をもらっておいて、一括注文を配達する前日に残業(もしくは週明けの月曜日が一括注文の配達なら土曜日に2時間だけ出勤)して引き合わせします。

病院の一括を担当している人は量がハンパ無いですよ!

その一括注文がくるのは、だいたい月初が多いですが、薬局によっては違う日を指定している所もあり。

薬価改定

ちなみに4月は薬価改定があるので、いつも以上に忙しくなる可能性アリです。

例えばある薬が今まで2,000円だったのに、4月以降は1,500円になった場合、3月の月末の時点で出来るだけ在庫を抱えたくないですよね?

逆に4月以降は2,500円に値上げされるとなった場合は、出来るだけ3月中にこの商品を買いだめします。

余分に購入した数×500円は薬局の利益になる訳ですから。

ここで疑問。

この一括注文。 薬局側は前日まで極力薬の在庫を減らして多く注文したいと考えています。

でも前日に患者さんがたくさん来ると薬が足りなくなってしまします。

そんな時は私たち卸業者に急配を頼む訳ですが、いつでもすぐに配達できる訳ではありません。(配送員がいなければ支店にいるMSや庫内の者が持って行きますが)

さらに一括注文を配達する当日は、配達量の多さに加えて欠品分もかなり多いです。

薬局側そして医薬品卸会社どちらもメチャクチャ慌ただしくなるし、間に合うのか?というストレスもあります。

それなら「月に何個以上注文いただければ、これだけ値引きしますよ!」というふうにすればいいのでは???

庫内の課長に話を聞くと、「あんなん意味のない昔からの習慣やねん」と。

3輪バイクで医薬品を配達

3輪バイクの配達
どこの医薬品卸会社も基本的に箱軽か大型バンで商品を配達します。

でも私がいた会社は、3輪バイクホンダ ジャイロ キャノピーでの配達もやっていました。(細かく言うと別会社ですが子会社みたいなものです)

主に急配要員ですが、私はその中でもルート配送でした。そうです、3輪バイクでルート配送していたんです。

これはもう大変でした。

何が大変かって、荷物が載らない!とにかく載らない!

いやぁ~確かに想像以上に荷物は載るんですよ。でも所詮50ccのバイクの後ろに箱が付いているだけですからねぇ。

下手すると箱軽の人より荷物が多い時があるし、投薬瓶の箱5ケースとか湿布10kgの箱とかエンシュア(24缶入り)10ケースとか出ることもあれば、一括注文の薬局も数件抱えていました。

ルートは近所からバイクで30分ぐらいの所まで結構な範囲をカバーしていましたが、大きい商品の納品先が近くなら一回支店に荷物を取りに戻ったり、足下に荷物を置いたりして何とかします。

出来る限り自分で配達するのが仕事ですが、
明らかに商品が載らない、時間が間に合わない場合は、早めにMSに相談したり同僚のバイク便(急配要員)にお願いしなければなりません。

特にMSさんにお願いするのって結構気を遣います。

明らかに載らない商品と分かっている時は「構わないですよ、持って行くから置いといてください」と言ってくれますけれども。(汗)

バイクに荷物が載るか分からないというのは結構なストレスでした。

一括注文も引き合わせするのに大変な量がありまして、メインは100錠入りの箱、そこに1000錠入りの箱や瓶、もちろん冷所やマルコウもいっぱい出ます。

多い薬局では1件で200個ぐらいの商品を持って行っていましたね。

大きさにすると、ツムラの段ボール箱(ツムラの大箱10個入った1ケースで縦×横×高さの合計が120cmぐらい)3個とそれより少し小さい箱1個、それに小さめの冷所カバンといった感じ。

引き合わせだけで15分近くかかるかな?

確かにバイク便は小回りが利きますが、こんな状況で決まった時間に配達するというのは無理があると感じる場合が少なくありません。

3輪バイクの運転について

見た目は非常に安定しているように見えますが、実は運転し辛いです。

確かにエンシュアなど重い荷物を積んでも大丈夫な造りですが、特に後輪が滑りやすい。

晴れの日でも、交差点にあるマンホールでブレーキを掛ければ滑ります。

当然雨の日はもっと滑りやすいのでスピードの出し過ぎとカーブでのブレーキは厳禁です。

屋根付きの3輪バイクなので、ある程度雨はしのげますが、そのまま運転すると肩がビチョビチョに濡れてしまいます。

ですので、私の場合は小雨ならベンチコーチふうのレインコートを羽織っていました。

あと路肩走行ですが、車幅もありますし加速も遅いのであまりしないほうが良いと思います。

医薬品配送員に営業はあるの?

配達員のあいさつは大事
最近はどの業種でも配達時に営業するのが当たり前になってきました。

医薬品を扱うこの業種でも配送員も営業させられるのでしょうか?

ご安心ください。 営業はありません。

ただし、“注文に繋がる配達営業を心がけろ” とは言われます。

つまり、「いつも来る配送員さんは気持ちの良い挨拶をしてくれます」「感じが良い方ですね」と好感を持たれるようにしなければなりません。

逆に「患者さんの邪魔をした」「馴れ馴れしい」「態度が悪い」といったことも得意先の先生や受付の方からMSに報告が上がりますから、納品中の態度は評価に繋がります!

この点、私は最初の頃どちらかというと「表情が暗い」とか言われてたみたいです。

最初は時間に追われながら間違えないようにと緊張して余裕がなかったので、どうしても笑顔で配達は難しかったですね。

でも、慣れてくると変わりますよ。

ここで私が心掛けたポイントを。

  • 入店時、お辞儀と挨拶は聞こえるよう大きめの声で元気よく。また笑顔を忘れずに。
  • 忙しそうでなければ天気の話題など一言だけでも話す。
  • 納品中気になったことはすぐに話す。ちょっとしたミスでもすぐに謝る。
  • 受取が終わった時に「ありがとうございました」と言って帰りますが、可能な限り退出時にお辞儀をする。

お辞儀に関しては、正直この業界でやっている人の方が少ないと思います。

お辞儀なんてしなくとも・・・と思う人もいますが、真面目な好印象を与えることもあります。

やる人が少ないからポイントが高いんですよ!

1年目の社内評価はボロボロでしたが、こうして2年目はほぼA評価になりました~

医薬品の配達は2つの事故に注意!

商品事故

お得意様にお届けする商品は大事に扱う。

これは基本中の基本ではありますが、箱やガラス瓶の商品って壊れやすいです。しかも高額なものもあります。

破損、汚損、雨濡れに注意です!

また、マルコウの商品は紛失がないよう特に注意!

もしも向精神薬を紛失させてしまったら、すぐに知事に連絡がいって新聞に載るような大事件になります!

交通事故

配達の仕事では、やはり運転する時間が長いのと、この仕事は時間に追われるので交通事故は起きやすいです。

特にバイク便は事故が多いので保険の値段が年々上がっていると上司が言っていました。

注意すべきこと

医薬品配送の仕事をやる上で気をつけるポイントは以下の通り。

  • 配達先で同業者が先に納品していないか必ずチェックし、薬局なら外で、病院なら納品口(窓口)より少し離れた所で待つ。
  • 患者さんが受付に来た場合、たくさん並んでいたとしても嫌な顔をせず後ろでただひたすら待つ。
  • よく似た商品があるので、絶対に間違わない。
  • 受取伝票のハンコ漏れがないかチェック!(もしあれば後日もらいに行く羽目になる)
  • 「できない」を言わない。つまり言い方です。逆に「しましょうか?」ぐらい言えればMSからの評価があがります。

メリット

忙しすぎて一日の仕事が良くも悪くも早く感じる

一日が長く感じる仕事は苦痛です。この仕事は休憩する暇もないぐらいの時が多いので、あっという間に一日の仕事が終わります。

休みは土・日・祝日きちんとあるので、仕事時間が短く感じるのはメリットかな?

残業が少ない。早出なら早く帰れる

基本的にルート配送から帰ってきたら、伝票をまとめたりして終わりです。翌日に一括注文がなければほとんど残業はないと思います。

しかも早出なら夕方4時半ぐらいで帰れちゃいます。

デメリット

商品の扱いが非常に厳しい

これは商品が高価なので仕方ない部分ですが、例えば抗がん剤10数錠入りの小さい一箱で15万円とかしますから。

薬の錠剤が入った箱って、荷崩れすると簡単に凹んだり破れてしまったりします。

少しぐらいの凹みなら、謝れば受け取ってもらえるかもしれませんが、持ち帰って破損が大きければ弁償です。

会社は保険に入っているでしょうが、それでも評価を落としたり少し給料から引かれます。

特に雨の日は要注意。

雨がポツッとかかっただけで返品という先生もいるそうです。それだけ雨の日の配送には気を配らなければなりません。

バスタオルやいろんな方法を駆使して、とにかく濡らさないようにします。

バイク便で台風の日は荷物を出す時にBOXに雨が入ってきて大変でした。

休憩時間がほとんど取れない!

医薬品の配送業務というのは、本当に時間に追われて仕事をします。

いつも来る時間なのに薬が届かないので、担当の営業や事務に「遅い!早く持ってこい!」という電話が来ることは珍しくありません。

そうなると携帯が鳴って、いつ頃届けられるのか尋ねられます。そしてあんまり遅くなると怒られます。

配達が遅くなったら、とにかく「すみません」と謝る。
事前に遅くなりそうなら事務やMSを通してそのことを伝える。

注文が多い日は当然ルートの配達件数も多いので例えば、

  • 朝一の便で暇な時は10件
  • 朝一の便で忙しい時は20件

と倍は違うものです。

さらにこの通常配達に加え、一括注文が入った時にはヒーヒー言います。

このように忙しい日はお昼ご飯抜きなんて珍しくありません。

そんな日のために “スニッカーズ” や 10秒チャージの“ウイダーinゼリー” などを用意しておくといいかもしれません。

休みが少し取りにくいかな?

基本は土・日・祝日休みで良いんですが、平日休みを取るには代わりに配送する者を立てる必要が生じるので、簡単には休みにくいと言えます。

会社は有給を消化することを勧めますが、休むと代わりの配送員がいない場合、同じエリアで別ルートの配送員に負担がかかりますし、MSも配送を手伝わなければならないこともあるので、気を遣いますね。

仕事の服装

求人内容の説明に書かれているのか分かりませんが、一社(ポロシャツ)を除き基本仕事着はワイシャツにネクタイ姿です。靴は革靴だとしんどいしスポーツシューズだと服と合いませんので、その中間的なやつを探してください。

ちなみにバイク便は雨の日の配達でレインコートを着て運転しますが、納品先の病院や薬局に着くと必ずレインコートは脱がなければなりません。

求人募集と面接と給料について

医薬品配送業の求人募集

募集の方法は以下の通り。

  • ハローワーク
  • タウンワークなどの求人情報サイト
  • 自社サイトでの求人募集

といったところでしょうか?

医薬品配送員の給料

この業界の配達員の給料は契約社員で月給20万円前後。勤続年数が長くてもそれほどアップしません。

会社によって違うかもしてませんが、契約社員でもミニボーナスは年2回あるようです。バイク便は寸志程度でした。(涙目)

勤務時間

基本的には病院や薬局が開く時間に合わせて出発出来るように準備しますので、早出の人でAM7:00出勤、AM7:30~AM8:30出勤と配達エリアによってマチマチです。

早出ならPM4:30に終われますよ!

面接で気をつけること

はっきり言って第一印象が最も大切です。

配送と言っても、おそらく営業と同じ所に会社があるのでスーツの人の出入りも多いハズ。そんな場所へカジュアルな服装で来れば浮きます。

スーツ意外の服装で面接に来られる方もおられますが、(ビックリしたのは山下清みたいなランニングシャツで来た人もいました)

基本的なことですが、面接の服装は絶対にスーツです!これで半分は落ちてるかも?

あとは面接する課長たちが気に入るかということですが、私の場合は前職が郵便局だったことが良かったのかな?・・・よく分かりませんが、書類選考で7人まで絞って面接で一人決定だったみたいです。

後で課長に聞いた話では多ければ10人ぐらい面接するそうなので、それなりに競争率はありますね。

面接中は、とにかく話を聞く。質問にはハッキリ具体的に答えましょう。

 

求人情報サイト一覧はこちら

まとめ

わりと向き不向きがハッキリしている仕事です。

車の運転が好きで礼儀正しく、得意先の人、MS、事務の人とのコミュニケーションが上手くはかれる方ならオススメの仕事です。

得意先の先生や受付方々との良い関係を築くことができれば、MSへの評価が上がりますし、少しミスしても「大丈夫ですよ」って許してもらえますので。